恋人との突然の別れ。それは、私の人生で最も暗く、冷たい出来事でした。別れた直後から、私の精神状態は完全に崩壊し、それと連動するように部屋も凄まじい勢いで汚部屋へと変貌していきました。彼と一緒に選んだ家具、一緒に食べた食器、彼が置いていった些細なモノたち。それらを見るたびに胸が締め付けられ、何も手に付かなくなったのです。最初は涙に暮れていただけでしたが、次第に食事を摂るのも、お風呂に入るのも面倒になり、部屋にはコンビニの袋や飲みかけのペットボトルが散乱し始めました。当時の私は、部屋が汚れていくことで、自分の心の痛みを目に見える形にしていたのかもしれません。荒れ果てた部屋は、私の心の傷そのものでした。床が見えなくなり、足の踏み場もなくなった部屋で丸まっていると、まるでゴミの一部になったような感覚になり、それが逆に、虚無感の中にいる自分にはしっくりきてしまったのです。しかし、そんな生活が数ヶ月続いたある日、久しぶりに訪ねてきた母親が、私の惨状を見て何も言わずに泣き始めました。その涙を見たとき、私の心の中にあった凍りついた何かが溶け出したのを感じました。私は自分自身を粗末にすることで、彼への未練を表現し続けていたことに気づいたのです。母の助けを借りながら、まずは彼の思い出に繋がるモノから処分し始めました。一つ捨てるたびに、重い鉛が体から剥がれ落ちていくような感覚がありました。部屋に掃除機をかけ、窓を開けて風を通したとき、数ヶ月ぶりに自分が「生きている」ことを実感しました。失恋という精神的なショックは、部屋を汚部屋にする強力なきっかけになりますが、逆に部屋を整えることは、失恋の傷を癒やすための強力なプロセスにもなり得ます。モノを整理し、環境を新しくすることは、過去の自分に区切りをつけ、新しい恋や新しい人生を迎えるための準備です。あの日の汚部屋は、私が再生するために必要な、通過儀礼だったのだと今は思えます。