行政代執行の結果として届く請求書の金額を見て、多くの人が「なぜこれほど高いのか」と驚愕し、打ちのめされてしまいます。その理由は、費用の内訳を詳しく分析すると明確になります。まず大きな割合を占めるのが、専門作業員による人件費です。ゴミ屋敷の清掃は、通常の引っ越しや片付けとは異なり、害虫や腐敗物、危険物との戦いです。作業員には防護服やガスマスクの着用が必要な場合もあり、その特殊作業手当が加算されます。さらに、行政代執行は一日から数日の短期間で終わらせる必要があるため、数十人規模のスタッフを同時に投入します。これにより、一日の人件費だけで百万円を超えることもあります。次に、廃棄物の処分費用です。ゴミ屋敷に溜まったゴミは、長年の蓄積で圧縮され、見た目以上の重量と体積があります。これらを種類ごとに分別し、それぞれの処分場へ運搬するコストは膨大です。特に、家電リサイクル法の対象となる製品や、タイヤ、バッテリー、薬品などの処理困難物が混ざっていると、その都度追加料金が発生します。行政の作業では、民間のように「安く捨てる裏技」は使えず、すべてが正規のルートで高額な処理手数料を支払って処分されます。さらに、車両費も重くのしかかります。何台もの大型パッカー車やクレーン車を長時間チャーターする費用は、数十万円単位で積み上がります。また、意外に見落とされがちなのが、行政側の事務経費です。執行に向けた調査費、文書の発送料、官報への掲載費、さらには執行当日の警備員配置費用や、証拠保存のための写真撮影・記録作成費などもすべて、所有者への請求額に盛り込まれます。行政代執行は、あらゆるコストが「正規料金」で、かつ「安全サイド」に見積もられるため、所有者が自分で業者を呼んで四苦八苦しながら片付けるよりも、遥かに高い代償を支払うことになるのです。これは、法的義務を怠ったことに対する厳しい社会的制裁としての側面も持っています。