特殊清掃員として数々のゴミ屋敷の現場に立ち会ってきましたが、最も過酷で精神的・肉体的な負荷が大きいのは、やはり排泄物が散乱・放置された現場です。玄関のドアを開けた瞬間に鼻を突く、鼻腔にこびりつくような強烈なアンモニア臭と有機物の腐敗臭の混ざり合った臭いは、一般的な消臭剤などでは全く歯が立ちません。防護服に身を包み、汗だくになりながら作業を進める中で目にするのは、何層にも重なった新聞紙の間に押しつぶされた便や、中身の入ったまま放置され、ガスで膨れ上がった無数のペットボトルです。これらは「爆弾」と呼ばれ、不用意に扱うと破裂して汚物が周囲に飛び散るため、細心の注意が必要です。作業中は常に感染症のリスクと隣り合わせであり、針刺し事故や防護服の破損には一瞬の油断も許されません。また、排泄物の水分を吸ったゴミは想像を絶する重さになり、搬出作業は困難を極めます。床一面を覆う汚物は、時間が経過するにつれてコンクリートのように硬く固着し、ケレン棒などで地道に削り取らなければならないこともあります。さらに辛いのは、そこに住んでいた方の生活の痕跡を目の当たりにすることです。かつての幸せそうな写真や手紙が、見るに忍びない汚れにまみれている光景は、何度経験しても胸が締め付けられます。私たちは単にモノを捨てるのではなく、その方の人生の崩壊した破片を整理しているのだという強い責任感を持って作業にあたっています。作業後、徹底的な除菌とオゾン脱臭を行い、ようやく臭いが消えた瞬間に、ようやくこの部屋に新しい時間が流れ始めるのだと感じます。便や尿にまみれた部屋を清掃することは、肉体的には極めて厳しい労働ですが、完了した際に依頼主様やそのご家族に見せる安堵の表情は、何物にも代えがたいやりがいでもあります。しかし、こうした現場を減らすためには、やはり初期段階での相談や、孤立を防ぐ社会的な仕組みが不可欠であると痛感せざるを得ません。