ゴミ屋敷問題の根深く、そして当事者にとって最も「辛い」側面の一つは、社会からの断絶と、それに伴う深まる孤独感です。部屋がゴミで埋め尽くされることで、その住人は自ら社会との接点を断ち切り、孤立していくという悲しい連鎖に陥ります。まず、ゴミ屋敷の住人は、自分の部屋の「惨状を他人に知られたくない」という強い羞恥心や罪悪感を抱いています。この感情が、友人や家族、近隣住民との交流を避ける行動へと繋がります。来客を拒否し、カーテンを閉め切り、夜間しか外出しないようになるなど、社会との接点を自ら断ち切ってしまうのです。電話に出なくなり、メッセージの返信もしなくなることで、周囲との関係は希薄化し、ついには完全に途絶えてしまうこともあります。次に、社会との接点を失うことで、「支援の手が届きにくくなる」という悪循環に陥ります。家族や友人からのサポートが減り、行政や福祉機関からの介入も困難になります。当事者自身も、助けを求めることへの抵抗感が強く、「こんな自分を誰が助けてくれるだろう」という絶望感から、問題を一人で抱え込みがちです。このような状況では、問題がさらに深刻化し、自力での解決はほぼ不可能となります。また、社会とのつながりの希薄化は、当事者が情報から遮断されることにも繋がります。ゴミの分別方法や処理方法、あるいは問題解決のための専門機関の情報などにアクセスしにくくなるため、片付けたくてもどうすれば良いか分からないという状態に陥りやすくなります。さらに、ゴミ屋敷が引き起こす悪臭や害虫の発生、火災のリスクといった迷惑行為は、近隣住民からの苦情や非難を招き、当事者をますます追い詰めます。地域社会からの理解や共感が得にくい状況は、当事者を社会の周縁へと追いやることになりかねません。この社会との断絶と深まる孤独は、当事者の精神状態をさらに悪化させ、うつ病やセルフネグレクトといった症状を重症化させる要因ともなります。ゴミ屋敷は、単なる物理的な問題ではなく、社会のひずみが個人を追い詰めた結果として現れる、深く辛い問題なのです。
社会との断絶深まる孤独