ゴミ屋敷化した部屋に排泄物が放置されている状況を、業者に依頼せず自力で清掃しようと考える方もいるかもしれませんが、そこには想像を絶するリスクと限界が存在します。まず第一に、感染症への対策が素人レベルでは不可能です。放置された便や尿は細菌の温床であり、不用意に動かすことで病原菌を吸い込んだり、目や傷口から侵入させたりする危険があります。もしどうしても着手しなければならない場合は、防護性能の高いN95マスク、ゴーグル、厚手のゴム手袋(できれば二重)、そして使い捨ての防護服が最低限必要です。清掃手順としては、まず汚染箇所を乾燥させないよう、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液で十分に湿らせ、菌の飛散を防ぐことから始めます。固着した汚物を削り取る際は、微細な破片が飛び散るため、特に厳重な注意が必要です。回収した汚物は、自治体のルールに従って適切に処理しなければなりませんが、大量の糞尿混じりのゴミは一般的なゴミ収集では回収を拒否されることもあります。また、強烈なアンモニア臭は一度肺に入ると数日間は抜けないほど強力で、作業中に気分が悪くなったり、呼吸困難に陥ったりするケースも多々あります。さらに、最大の限界点は「臭い」と「汚れの浸透」です。市販の洗剤や消臭剤では、壁紙の裏や床下の基礎にまで染み込んだ臭いの元を断つことはできません。表面だけを綺麗にしても、数日後には再び耐え難い悪臭が復活し、せっかくの努力が水の泡となるのが関の山です。また、ゴミ屋敷特有の害虫(ウジ、ハエ、ゴキブリ)が排泄物の中に卵を産み付けているため、徹底的な駆除を行わない限り、清掃中や清掃後に大量発生を許すことになります。このように、排泄物が絡むゴミ屋敷の清掃は、医学的・科学的な知識と特殊な機材を必要とする「プロの仕事」です。精神的なショックも大きく、無理に自分で行うことは、心身の健康を損なうだけでなく、被害を広げてしまう結果になりかねません。ある程度の範囲を超えた場合は、迷わず専門の特殊清掃業者に相談することを強くお勧めします。