不動産業界という、一見華やかで成功者の象徴のように思われる世界には、深い闇が潜んでいます。その闇に呑み込まれ、セルフネグレクトからゴミ屋敷の住人となってしまう30代の宅建士が少なくない事実は、業界全体が真摯に向き合うべき問題です。宅建士の仕事は、数字がすべての実力主義です。歩合給のために休日を返上し、深夜までポスティングやチラシ作成、契約書の準備に追われる。30代という最も脂の乗った時期に、自分の時間をすべて切り売りして成果を求めるあまり、自分自身の健康や衛生状態への関心を完全に失ってしまうのです。これを「セルフネグレクト」と呼びます。セルフネグレクトに陥った宅建士の部屋は、文字通り地獄のような様相を呈します。食べかけのコンビニ飯にカビが生え、未払いの請求書が山積みになり、寝床さえもゴミに侵食される。しかし、彼らは外では完璧なスーツに身を包み、笑顔で一億円のマンションを売っているのです。この二面性の恐怖は、当事者にしか理解できません。なぜ彼らは片付けられないのか。それは、脳が「仕事以外の判断」を拒否しているからです。一日中、他人の不動産に関わる膨大な判断を下し続け、脳のエネルギーを使い果たしているため、帰宅後に「ゴミを捨てる」という簡単な判断さえできなくなるのです。ある30代の同僚は、自室がゴミ屋敷であることを誰にも相談できず、精神を病んで業界を去っていきました。宅建士という資格が、彼らにとっては重い鎖となり、助けを求めることを阻害してしまったのです。業界の闇、それは人間を単なる「数字を出す機械」として扱い、そのプライベートの崩壊を見て見ぬふりをする風土にあります。私たちは、宅建士である前に一人の人間です。自分の生活が維持できないほどの過重労働は、結局のところ、お客様に健全な提案をすることも不可能にします。セルフネグレクトの恐怖から脱するためには、業界全体が働き方を見直し、個人の尊厳を尊重する文化を醸成することが不可欠です。ゴミ屋敷は、その歪んだ構造が物理的に具現化したものに他なりません。