自分の親が暮らす実家が、いつの間にかゴミ屋敷になっていた。その事実を目の当たりにしたとき、子どもとして「何とかしなければ」と強く思うと同時に、頭をよぎるのが「この片付け費用は、一体誰が負担するべきなのだろう」という、極めて現実的で、デリケートな問題です。このお金の問題は、家族間の感情的なしがらみと深く絡み合い、時として深刻な亀裂を生む原因にもなりかねません。 法律的な観点から言えば、その家の所有者、あるいは居住者である親自身が、片付けの責任を負い、費用を支払うのが原則です。しかし、多くの場合、ゴミ屋敷の状態に陥ってしまった高齢の親に、数十万円にもなる片付け費用を支払う経済的な余裕がないのが現実です。また、認知症などが原因で、そもそも片付けの必要性自体を認識できていないケースも少なくありません。 そうなると、必然的に子どもたちが費用を分担して支払うという流れになりますが、ここでも新たな火種が生まれます。兄弟姉妹がいる場合、その負担の割合をどうするかで意見が対立することがあります。「親と同居している長男が多く負担すべきだ」「収入に応じて公平に分けるべきだ」「いや、親の問題だから自分は払わない」。それぞれの家庭の事情や、親との関係性の濃淡が、この金銭問題に複雑な影を落とすのです。 この根深い問題を円満に解決するためには、まず何よりも、兄弟姉妹全員が顔を合わせて、腹を割って話し合う場を設けることが不可欠です。感情的に責任のなすりつけ合いをするのではなく、「親の安全で健康な生活を取り戻す」という共通の目標を確認し、そのために必要な費用をどう捻出するかを、冷静に話し合うのです。親の預貯金で賄えるのか、年金から少しずつ返済してもらうのか、あるいは子どもたちが「親への最後の親孝行」として負担するのか。 もし、どうしても話し合いがまとまらない場合は、問題を先送りにせず、家庭裁判所の調停を利用したり、弁護士などの専門家に間に入ってもらったりすることも、一つの選択肢です。お金の問題は、家族の絆を試す試練でもあります。この困難な課題を共に乗り越えることで、家族はより強く、新しい関係性を築くことができるのかもしれません。